現在のディナーのカタチは“ロシア式サービス”である。


現在の「ディナーコース」のカタチって、イタリアンでもフレンチでもなく、ロシアで完成したと言われている。

f0337316_10191577.jpg
ショーダンサーのナタリアにもらったロシアの書物。

Wikipediaによると、
それまで多くの料理を同時に食卓に並べていたのを改め、一品ずつ食卓に運ばせる方式を採用した。これは、寒冷なロシアで料理を冷まさず提供するため、フランス料理の料理人が工夫したものがフランスに逆輸入されたといわれ、ロシア式サービスと称される。
とある。

イタリアで原型が生まれ、フランスで育ち、ロシアで完成する。これはバレエなどと同じ流れで興味深い。
※途中でイギリス王室が絡むのもまたヨーロッパ文化の特徴である。

シャンパン「ヴーヴ・クリコ」もロシアでの発売を機に大成功し、ルイ・ロデレールの「クリスタル」もロシア皇帝の要望によって誕生したものだ。

しかし、今では当たり前となったこのスタイルを「ロシア式サービス」だと思って提供している人・食べている人は少なくとも私の周りでは聞いたことがない。
むしろイタリアンが一番とかフレンチが一番とかロシアが除外されて語られることが多いし、わざわざロシアに勉強に行く人も今のところ聞いたことがない。

f0337316_08431021.jpg当時の文化は、今以上にお国柄が出ている。
ロシアは金(ゴールド)もあるし、石油、ガスなど天然資源も豊富だ。いわゆる“資産家”である。
中世ヨーロッパが栄華を極めた際、ロマノフ王朝が金細工用の金取引で大儲けしただろうことは想像に難くない。
そのロシアの貴族(または皇帝)が、陸続きの向こう側で栄えたイタリアやフランスから、文化を「取り寄せる」ことはごく自然な流れであり、今の日本で言えば円高時の輸入業の活気にも似ている。

全てがある街“東京”で、ルチアーノショーが掲げる「貴族の晩餐」の意味するところも見えてくる。

「アミューズ」は来客を待たせないための一品だし、メインディッシュが冷めないよう一品づつ提供したフランス料理のロシア式サービスは、結局のところ「おもてなし」精神から生まれたものである。“シーザーサラダ”の誕生も同じことが言える。

当時の文化的に、庶民に対し一皿づつ用意するかと言うとそうではない。お金に糸目を付けない帝政ロシアの貴族達に提供するからこそ思い立ったのだろうと推測する。

スタイルを完成させるのは、消費者であるということが言える。

イタリア、フランスに対するロシアの関係は、マハラジャの「トランク」のオーダーに応えることで成長してきたルイ・ヴィトンとの関係を思わせる。

お金に糸目を付けない「買い手」に向けてカスタマイズ(特化)・オプティマイズ(最適化)していくうちに、研ぎ澄まされた完成型が見えてくる。

実際のところ、例えばソムリエはワインのプロであっても自分のお金でロマネコンティが飲めるかというとそうではなく、VIPにサービスする際“テイスティング”するその瞬間まで多くの場合は味さえ知らない。料理人が毎日キャビアとシャンパンを合わせて試行錯誤できるかと言えばこれもまた違う。
この場合のロシアは、すなわち欧州にとっての“研究・開発費”の出所(スポンサー)だったと見なしてもいいのではないか。と思う。

ルチアーノショーは創業当初ロシア料理店かと思われた程にロシアは重要な位置づけである。
そんな本日のBGMはここぞとばかりに "From Russia With Love" by 007 James Bond Soundtrack

f0337316_21035501.jpg
ジェームズ・ボンドが愛飲するボランジェ“ラ・グランダネ”。

日本のように太平洋に浮かぶ島国ではなく、ヨーロッパ大陸は字のごとく陸続きなのです。

当時は大した境目もなかっただろうから、国境付近に住んでいる人達なんてお互いの文化が入り交じっていたに違いない。
スイスなんて典型例だ。ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語を公用語としている。

この100年ロシアは政治的に別路線だが、ヨーロッパの国々は通貨をユーロで統一し、ビザもシェンゲンビザに統一した。彼らは乗り入れる際にビザはいらない。
「陸続き」とはそういうことで、決して特定の一国だけで文化や習慣が成り立っているわけでもなければ、お互いに多いに影響を受け合って現在に至っていることを忘れてはならない。

数年前、フレンチの有名シェフ(もはや巨匠か)ジョエル・ロブション氏と直接話しをする機会に恵まれた。
日本では恵比寿の本店が有名だが、後に六本木にカウンター形式の店舗を出店したことで注目を集めた。

フレンチをカウンターで食べるの

多くの人はそう思ったに違いないし、納得いかない料理人もいたのではないだろうか。
バーカウンターや天板焼き、お寿司屋さんのイメージが強いから。

これについてロブション氏に尋ねてみたところ、スペインでカウンター越しに提供するタパスに触れて、自分も是非やってみたいと思ったそうだ。

今度はスペインですよ。
世界最高のレストランと言われた「エル・ブジ」もスペインだし、こうして世界は刺激を与えあい、影響を受け、切磋琢磨している。

日本人が考えるほどイタリア!フランス!イギリス!ロシア!と線が引かれているわけではないように思える。
隣国とは多少のイザコザやプライド、見栄の張り合いもあるだろうが、それは日本にとっての韓国・朝鮮・中国との関係と似ている。
日本の公文書にも「漢字」(氏名欄など)のことを「Chinese character」と表記してあるし、多くの文化を取り入れ影響を受けていることは紛れもない事実であり、それを好き嫌いで否定しても意味をなさない

数年前、英国オックスフォード大学の女学生とディナーを楽しんだ際、「イギリスはフランスから多くの文化的影響を受けています」と話していたことが印象的だ。
コメディなんかではイギリスとフランスは罵りあっているシーンがよくあるが、何気にお互いを認め合っている。
フレンチブルドッグ”は、英国の「象徴」がフランスにもたらした人気種だし、映画カジノ・ロワイヤルで英国人俳優ボンドとフランス人女優ヴェスパーの組み合わせが歴代人気ナンバーワンであることも興味深い。

f0337316_21021911.jpg

ちょうどこの記事を仕上げる際、日本がワールドカップで敗退したというニュースを読んだ。
“「日本らしさ」も大敗の現実”という見出しを見かけ、ふと日本らしさとは何だろうと考えた。
日本らしさを出すことが良いか悪いかの前に、そもそも「日本らしさ」を見誤っていなければ良いのだが。
「自分たちの良さ」って結構勘違いしていたりする。時としてナルシズムが入ることさえある。
顔写真を撮って、自分で選ぶ写真と他人が選ぶ写真は多くの場合異なる。それと似ている。

これだけ海外でプレーしている選手が多い時代に、共通の「日本らしさ」を見いだすのは難しくないか。
/*
例えば私は生粋の日本人だが、「白いご飯」はこの先一生食べられないと決まっても何の影響もないタイプだ。
パリ行きのJAL便で乗客は日本人が多く、機内食は8割くらいがフレンチを選んでいる様子だった。一方帰りの機内食では、私を除く全て(お手洗いに立って見渡せる範囲)が和食を選んでいた。私は変わらずフレンチだった。
*/

日本人らしさというよりも、「日本人とはこうあるべき」という固定観念がこの時代にそぐわないこともある。
30年前とは体型も異なれば、インターネットもメールも携帯電話も普及した。
大地震も何度も起きたし、ソ連は崩壊し、9.11テロもリーマンショックも起きた。

もう一度“らしさ”について考えてもいい頃合いではなかろうか。

本来、「成長し続けることが日本人らしさ」と言われるのが一番良いはずではないか。
だとすれば「らしさ」は“前回”とは別物である可能性が高く、すなわち常に「未知との遭遇」である可能性が高い。

そう考えれば、(本題に戻るが)他国の文化を認め(敬意を払い)、良いものを積極的に取り入れ成長していくことは国益でさえあると思う。

それがルチアーノショーの掲げる「東京料理」の姿ではないかと思うチャーリーであります。

お食事は、“明日はもっと速く走る”ルチアーノショーへ。

Photographer: Charlie

Homepage
Facebook
Twitter
Access MAP
ルチアーノショーで働くスタッフのブログ
専属カメラマン☆チャーリーの寄稿ブログ(過去ログ)
専属カメラマン★チャーリーの部屋(過去ログ)

ルチアーノショー
〒107-0052 東京都港区赤坂5-4-7 The Hexagon 9F
TEL : 03-3568-4818

by charlie-ls | 2014-06-26 03:27 | 【赤坂】ルチアーノショー寄稿ブログ

カメラマン☆チャーリーのブログ


by チャーリー
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30