立候補または指名から投票という民主主義的な決め方論の再考。

今回はこのテーマ。

「世界はポピュリズムに流され無責任な社会に」英米在住のジャーナリスト、EU離脱とトランプを語る
http://www.huffingtonpost.jp/2016/07/01/eu-trump_n_10767194.html


とてもわかりやすい記事でオススメ。

ピュリズム。まさしく。

これをちょっとした「ゲーム」的な見方で“心理”“理論”を分析してみた。

例えば従業員100名の会社で「100万円の臨時ボーナスを出す」と発表される。
「私こそ、それを受け取るのに相応しい働きをした者だ」「あの人こそ受け取るべき人だ」という人は名乗り出て(指名して)くださいとのことだ。当然その後審査する。名乗り出ない(指名されない)限り絶対にボーナスはもらえない。
これは、会社が上から眺めて評価を下すよりも、普段の仕事ぶりをよく見ている同僚目線で誰が相応しいと考えているかを知るために行うもの。同僚の目が怖ければ、サボっている人が名乗り出たりはしないのだから。すなわちお互いを監視させ「密告」を誘発する因子を持っている。

日頃から散々「こんなに働いているのに」と自分の賃金に不平不満を言っている人にはまたとないチャンスだ。

しかし、先陣を切って名乗り出た者は、その後大方(影で)袋叩きに遭う。同僚に(笑)。「あいつがもらうくらいならオレの方が相応しい」とか、後出しじゃんけん的に「あいつが相応しくない10の理由が噴出する。仕事中より巧くパワーポイントを使って(笑)。それを見た他の同僚は「おー、怖い怖い。自分から名乗りでるもんじゃない」と学習する。自分がボーナス100万円をもらった場合、皆が賛同してくれる自信がないから。心のどこかで100万円分程の仕事量・能力差がないことは“実は”自分が一番よく知っているからだ。

そこで、「100万円を100人の従業員(全員)で均等に10,000円づつ分けるのがいいんじゃない?」という、まるで戦後の配給のような均等主義が出てくる。競争は嫌いだ(勝てる気がしない)が、自分も確実に10,000円もらえる方法を選ぶ人だ。一瞬(30秒くらい)、平等で公平で巧くいくように見えるかもしれないが、そうではない。一般人の思考の通過点でしかない。この問題は、「同じ10,000円」づつもらうことが不満な人がいる(多い)からすぐに破綻する。むしろこちらが本質的な不満だという点も見逃してはならない。

この「不満」の度合いは、臨時ボーナスによって裏側に潜んでいた「欲」を刺激されたことで、何ももらう予定のなかった(ボーナスの話しが出る前)時点より強い。「もっと自分の仕事の見返り(対価)が欲しい」という欲とは別に、「私は●●よりもっとよく(沢山)働いている」という、同僚に対する「優劣」評価の不満(自己顕示欲)が加わる。ボーナス自体が存在しなければ、少なくとも不満の標的は会社1つだったが、ボーナスが発生して、もらえる・もらえないや金額の差が生じた途端、全員が敵になる(可能性を大いに秘めている)。

早い話、「あいつが10,000円のボーナスをもらうなら、オレは30,000円はもらってもいいはずだ」と。そして「オレが30,000円もらうに相応しい5つの理由」みたいなのが噴出する(笑)。もうこうなったら根回し、プレゼンテーション合戦だ。自分から名乗り出ずに「指名」票を得るため。

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日本人は「謙虚」で「慎ましい」ことになっている。欧米人のように自ら「私は他の誰よりもいい仕事をしています。ですから賃金を上げてください。或いは臨時報酬(ボーナス)を出してください」とは言わずに、“全体的な流れ”<ホリスティックでオーガニックな(笑)>によって(できれば自分は望んでいなかったが仕方なしに)高い賃金を得ることになったと振る舞える環境を作り出そうとする。「言い訳」好きだ。
「もっとお金が欲しい」というと、自分が強欲であり、お金のために仕事をしているように思われそうだから、自分から要求せずに勝手にもっともらえる流れを望む。プロファイリングする上で、これは追加の報酬を受け取り、更には「強欲だと思われたくない」という欲も同時に満たそうという、見事な強欲ぶりに注目すべきポイントだ。「聖人」のままお金もらおうという魂胆だと言える。
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そもそも会社は「100万円を受け取るのに相応しい働きをした」と名乗り出た(或いは指名された)人に臨時ボーナスを出すと言っているのだから、10,000円の均等配分はおかしい。サボってた人も受け取ってしまうのだから。よって最初のルールも忘れて(理解できないまま)「均等分配しよう」なんて言い出すセコい人は、そもそもルールにそぐわないし同僚の理解も得られないから、初期段階でこの理屈は破綻する。5人中1人は必ずそんなタイプの人がいる。

放っておくとこうしてダメ集団していく。

会社側はしびれを切らし、「では今回は立候補(指名)なしということで・・・」と終了宣言しようとしたところ、ちょっと賢い人が「投票制」にしようと考える。ゼロで終わるくらいなら、自分が「指名」を受ける可能性にかけてみたいから。「もしかすると彼女はオレのこと好きかも」的な発想。「みんなで誰が沢山もらうに相応しいか(自分以外に)投票して、その数の比率で決めよう!」と発案する。「選挙」の始まりだ。「みんなで決めたんだから不満はないだろう」ということで、これを「民主主義」だと思い込む。

が、当初会社が提示した「指名を受けた人」(積極的)とは違い、全員が必ず誰かに投票しなければならない点(消極的、受動的)に問題がある。「この人だ!」という意思による指名と、「この中から選ばなきゃいけならいならこの人かな」ではまるで違う。「該当なし」(この中に相応しい人はいない)を生み出さない仕組みだ。

※ここでの“相応しい”は、「100万円を手にする唯一の人」という存在。33万円づつ3人なら該当者がいるかもしれない。

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ちょっと余談だが、「指名1番」になる自信のない人は、このままでは「ゼロか100か」になってしまうので、「3等賞くらいまで定めよう」と言い出す。例えば50万円、30万円、20万円だ。深読みするとこの心理は、投票によって「ぶっちぎりの1等」が出てしまうと、今後は会社だけでなくその「圧倒的なカリスマ」の支配下に置かれる可能性を敬遠し“スター”を出したくない心理だ。何気に男性社会に多い。
*/


ここまでで重要なのは、「他人の不満」こそが「人々の恐怖」であるという点。
民主主義を「引き」(寄りの反対)で見ると、民衆の敵は民衆だ。組織の上層部じゃない。だからこそ民主主義と呼ぶんだが。

また、とりあえずはみんなで決めて20万円でも30万円でもいいからボーナスをもらった「前例」を創らないと、いつまでたっても5万円すらほしいと言い出せない環境が続くから、「前例」すなわち「盾」(礎でもいい)になってくれる「強い人」を求めるわけだ。「求められたリーダー」そして「創り出されたリーダー」の始まりだ。※ココでも重要なのは、「創り出した」のは上層部ではなく民衆だ。

オモシロイのは、既にこの時点で、「絶対的にこの人!」という人は、そもそも存在していない集団だということがわかる。ミンナ大して誰も支持していない。

とった具合に、ミンナでやろうとすると好き勝手なまとまらない集団になるし、かといって圧倒的なカリスマ的リーダーが常に存在するかというとそうでもないから、仕方なしに誰か選ぶしかない的なのが社会の図式だ。当初求められていた積極的支持と、投票制度で生じた消極的支持との違いだ。


こから先は、それでも投票を進めようという前提で考えてみた。
会社側は「投票制」を取り入れることにしたが、ルールを変えず100万円=1人のままとする。
ただしちゃんと「投票」の結果に根拠を持たせるために、ボーナス候補者(投票の当選者)は最低でも全体の20%(=20人)の票が取れなければ該当者なしとする。また、全員が「相応しい人」上位3人と、「絶対反対」上位3人の計6人を投票し、どちらにも「該当なし」の投票を認め、もし「相応しい人」の票で上位になっても、「絶対反対」の票の数が上回った場合は該当者なしとする。

支持1位:
支持2位:
支持3位:
支持なし(該当なし)

反対1位:
反対2位:
反対3位:
反対なし(該当なし)

という具合。
※更には「投票拒否」も用意した方がいいかもしれない。投票そのものに不信感を抱いた場合のためにだ。

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「投票」の結果に根拠:ここでは20%にしてみたが、考えられる事象から適時割り出せばいい。防ぐべき行為は、みんなで申し合わせて、AはBに、BはCに、CはDに投票するようにという小細工が発生し、全員が1票づつで1位になってしまうなどだ(結局1人1万円の均等割り)。

仮に10%に設定した場合、10人の人が約10%均等に票を獲得すると、この10人は他人から見た評価の差がないため、その中の1人が(更なる頂上決戦で)100万円のボーナスを1人占めするには値しない。例えばA〜Jの10人が全体100人のうちA:10票、B:10票、C:10票、D:10票、E:10票、F:10票、G:10票、H:10票、I:9票、J:11票という票を獲得した場合。10%に満たない「I」(9票)は落選するが、A〜HとJを比べてもたかだかしれていて、1票だけ多かった「J」または誰がボーナスをもらおうとも、同じ数だけ「え〜あの人ぉ?」と不満を持つ人がいることになる。

この数値を高く設定する程、「圧倒的カリスマ」が登場する可能性もありつつ、「該当なし」が発生する可能性も高まるため(通常100人中20票を集めるのも難しい)、母集団の特性を見て慎重に決定する必要がある。

「相応しい人」上位3人と、「絶対反対」上位3人を投票する理由は、最も人気のある人が、同時に最も嫌われている可能性も考慮する必要があり(例えば好き51人、嫌い49人のようなケース。今回のイギリスEU離脱投票結果のように)、そういったタイプの人が選ばれると、組織としてはその後の「混乱」「反乱」によるデメリットの方が大きくなる(場合によっては半数が辞めてしまう可能性さえある)。

民主主義と確率論。多数決と昼飯から考察。』に、ランチにそば、うどん、ラーメンを選ぶ例で詳しく書いている。

http://ameblo.jp/lucianoshow/entry-11769733290.html
*/


こうして見てみると、選挙とか多数決とか投票制とか、いい加減考えられる問題点を修正し、改訂版、すなわちバージョンアップ版へと移行した方がいいんじゃないかと思う。これだけ「アルゴリズム」社会になった割には、初版のまま全く改訂されない手付かずの分野だ。

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実際の社会においては、改訂し続け、せっかく確実な人気投票の仕組みを獲得したとしても、「自分は票が取れない」可能性だけを学び取る人達がいる(自分中心)。その結果、誰が優れているか(選ばれるか)よりも、「立候補者達にどんな問題があるか」のぶちまけ合いが主流になってしまうのが世の常。更には投票の結果が気に入らず、引きずり下ろすためにスキャンダルをすっぱ抜こうとする努力に明け暮れる。生産的ではない。
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ま、そこが冒頭でご紹介した記事の内容そのままで、どんなに筋道立てて説明に時間を割いたとしても、「理屈はいいから、自分達のこの怒りを何とかしてよ」的な感情の方が重要になってしまっているこの世の中においては、いっそドナルド・トランプのように、言いたい放題ぶちまけて、あたかも「理屈じゃない!民衆の見方だ!」であるかのように振る舞う方が支持が得られやすい。

津山 トランプ氏が支持されている理由として、日本ではよく知られていない要因が2つあります。1つは、トランプ氏の支持層である、大都市に住んでいない年配の白人有権者たちに大手メディアの報道が浸透していないことです。彼らはまず新聞をとっていない。そして夕方のニュース番組もちゃんと見ていない。でもトランプ氏は、「ジ・アプレンティス」というリアリティショーのホスト役を11シーズンもやっていたから馴染みがあるし、ちょっと変わった面白いおじさんだよねっていう好感を持たれているんです。

そもそも論だが、「真のリーダーを見抜く力」は、リーダーになる資質と同じくらい貴重な能力だ。皆に備わっているものではなく特別な能力。誰もが一流プロデューサー、一流スカウトマンになれるわけではないように。だから自由に選ばせたところで正しいものを選ぶ保証はないどころか、相場や深夜のテレビショッピングと同じように、大方変なものを掴むようにできているという点を忘れてはならない。

イギリスEU離脱の国民投票は2つ考えられる。
1つはタンブラーに書いたソレ。よくあるお調子者手法。
もう1つは、イギリスをEUから離脱させたいが、政治家の判断で決めてしまうと、残留派の国民の暴動が怖いから「民衆に決めさせよう」という考え方。要は常に人口の8割は現状に不満を持っているのだから、「どうしたい?」と聞けばほぼ間違いなく「今と違うもの」(離脱)を選ぶという先読み(逆張り)心理戦みたいな手法。

やれやれだ。

しかし。
決まったからには前を向くというのがこれからのリーダーであり、何でこうなったんだと反省し続けるのはこれまでのリーダーだ。

そんな本日のBGMは、Anarchy in the U.K. - Megadeth(笑)。
https://www.youtube.com/watch?v=rOYKFIsrnRM

新しい大英帝国に期待し応援したい。

チャーリー(
JAPAN MENSA会員

AEAJアロマテラピー検定1級
AEAJ認定アロマテラピーアドバイザー
AEAJ認定環境カオリスタ
AEAJ個人正会員
JAMHAメディカルハーブ検定1級
JAMHA認定メディカルハーブコーディネーター

チャーリーのタンブラー(毎日更新、日記・ブックマーク的な)
by charlie-ls | 2016-07-30 22:21 | 個人ブログ

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