国家公務員の「正義のハッカー」、超相貌認識力「スーパー・レコグナイザー」
2015年 07月 02日
「いや〜、政府がハッカーを雇うなんてさすが米英ですよね。日本じゃ考えられない。そもそもハッカーって言葉自体、外国映画くらいでしか聞きませんし」と続いたので、私は下記の記事を紹介した。
「正義のハッカー」登用へ=サイバー攻撃対策強化-政府
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201503/2015030800096
サイバー攻撃対策で確保必至!内閣官房「正義のハッカー」増員中
http://www.iza.ne.jp/topics/events/events-7105-m.html
タイムリーにも今年度からだ。
身分は国家公務員。
できればネクタイ着用を義務づけてもらいたい。いやタキシードで(笑)。
“日本のホワイトハッカーはタキシードらしいよ”的な噂を流してみたいという、たったソレだけの理由で。
何よりも重要なのは、「単にプログラムに詳しいだけではなく、社会情勢を理解し、戦略的思考のできる人に来てほしい」という点。
ただの技師ではなく、いずれは総合職、管理職としての道が開かれていることが見てとれる。
この記事を読んだ冒頭の彼は驚いた。
どうやら私が言うところの「セキュリティ」(暗号化も含む)は、米英の優秀な諜報機関における話を紹介していると思っていたらしい。
そうじゃない
飲食店のブログに書いている以上、常に「今目の前にある事実にどう向き合うか」という視点であり、決して“未知との遭遇”がテーマなわけじゃない。
サービス業というのはホスピタリティを追求する仕事なのだから、いつまでも昔の「おもてなし」では通用しないし、時代に必要な配慮ができなければもはやそれは“サービス”ですらなく、お金を払う価値がなくなってしまえばその時点で存在意義がなくなってしまう。
だからこそ、あり得ないSFファンタジーな話よりも、今そこにある“変化”に対して、何が求められているのかを探ることこそ、明日の仕事のための予習であると、私は思っている。
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実際に大英帝国は進んでるなと思う記事をご紹介する。
Dyslexia is Britain's secret weapon in the spy war: Top codebreakers can crack complex problems because they suffer from the condition
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2362793/Dyslexia-Britains-secret-weapon-spy-war-Top-codebreakers-crack-complex-problems-suffer-condition.html
シギントが主な業務の英国諜報機関GCHQが、ディスレクシア(学習障害の一種である。難読症、識字障害、(特異的)読字障害、読み書き障害)の人を120人採用したという昨年のニュース記事。暗号解読において特殊な能力を発揮するらしい。そう、暗号はできるだけわからないようにするためのものなので、一般的な視点で見てわからない方が当たり前。だからこそディスレクシアの人達の眼が新鮮なヒントを与えてくれるという発想が素晴らしい。
※ニュース記事の日本語翻訳は「GCHQ ディスレクシア」でお探しください。
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例えば、この記事。
もう使えない…米名門ホテルに中国の影、情報漏れ警戒
http://www.iza.ne.jp/topics/world/world-7184-m.html
ニューヨークの名門ホテルを中国資本が買収したことで、政府関係者は利用ホテルから除外したという話し。
このように母体が大きければ、資金潤沢であれば、経営が安定していればいいというわけではなく(助かるのは従業員だけ)、どこの国の資本であるかを気にする顧客もいるということについて、日本で議論されることは少ない。むしろ運営元はデカけりゃデカい程誇らしいと思っている従事者も多いだろうが、実際には誰(株主など)の手もおよばない、独立系資本の店も求められている。
身近なところで言うと、アップル社の重役が、マイクロソフト社の運営するカフェで開発中の商品の話し合いはしないだろうということ。
結局のところ、噂や報告とは、(産業)スパイや諜報活動と大差なく、情報とは漏れた時点で損害だ。壁に耳ありクロード・チアリとはよく言ったものだ。
日本はさほど敵対している国がないから、永世中立国だからという影響もあってかノンビリしているが、例えば周りに旧ソ連圏諸国の人達が多い私は、アメリカ資本のものに対し気を遣わなくてはならないシーンによく遭遇する。
1991年、ソ連が崩壊した後に生まれた現在24才以下の東側諸国の人達は特に何の感情も抱いていないことが多いものの、思春期をソ連時代に過ごした年代から上の人達は、まだまだアメリカに対して大きな不信感(敵対心)を抱いていることが多く、時として拒絶反応を見せることがあるので配慮が必要だ。
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2年ほど前、知人女性2人(国籍はアルゼンチンとロシア)が、友達(米軍)の誕生会に呼ばれ、関東内の米軍基地へ行った。
セキュリティゲートでパスポートを見せると、日本に来て2年程のアルゼンチンの女性はそのまま入れたが、はるかに居住年数の長い(5年)ロシアの女性はゲートをくぐることもなく追い返された。英語が堪能な彼女は「友達に招かれた」ことを説明しようとしたが、聞いてもくれなかったと言う。電車もない時間だったので、タクシー代2万円をかけ1人で帰ったそうだ。
一方で私個人の話だが、かれこれ10年以上前、仕事でヘリコプターに搭乗した際、関東のある目的地付近にヘリポートがなかったため、周辺に着陸できる場所がないかリサーチしたところ、米軍関連施設が名乗り出てくれた。その代わり、着陸からゲートを出るまで武装軍人による移送が条件だった。9.11の後だったので意外にも好意的・協力的な印象だった。
まだまだ「国籍」が重要視される社会情勢だ。
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しかし日本のホテルなどでは平気でロシア人客に向かって「アメリカの方ですか?」なんて世間話が“発生”する。
私からすれば見てわかるでしょと思うんだけども、日本人は外国人の顔の見分けが付かない人が多いらしく(それでもファッション等でわかるはずだが)、多くのヨーロッパ人は祖国の歴史に誇りをもっていて、アメリカ人と思われることを快く思っていない(ことが多い)。
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若干脱線するが、下記記事の中盤にある【Are you a super recogniser? 】のテストがおもしろい。
一度見た人の顔は忘れない。あなたは超相貌認識力の持ち主か?「スーパー・レコグナイザー」チェックテスト
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52194456.html
私は12/14点で、一応スーパー・レコグナイザーらしいが、男性の顔は64回見てもきっちり忘れられる能力を身につけているし(笑)、一方で素敵な女性の顔は見なくても電話やメールごしで感覚視する得意技も持っている。
※メールアドレスを登録してもまだ「45分間かかるテスト」のURLが送られてこない。
サービス業(ましてや高級店)に従事する身で「だって外国の人って区別付かないんだもん」じゃそのうち通用しなくなると私は思う。
言い換えると、それで通用している間は特定の顧客層が離れ続けているということ。
極端な話、アラブ諸国の顧客に「アメリカの方ですか?」と聞けば、大凡“わざと”言っているんだろうと受け取られるに違いない。
冷戦時代を生きた旧ソ連圏の人達にとってアメリカ人と間違われた際の心境はそれに近い。
ということは、社会の教科書を読んで大凡理解しているはずなのに、なぜかサービス業の現場ではそれほど認識されていない。
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日本でいわゆる「職人」が高給取りになることは少なかったが、これだけインターネット社会になると技術系出身の管理職が増えるに違いない。
日本で次期総理にふさわしい人は?とアンケートを採ると、なぜかいつもビートたけし氏が選ばれるが、アメリカではトップ10がハイテク系企業のCEOが顔を並べる。
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「僕が言うセキュアとは、すわなちWP2エンタープライズ認証の〜」と始まり、スタッフは「すぐに確認致します」と言ったはいいものの、上司も含め何の事やらわからないというのが一般的な現状。
※もっとも彼らの“緊急事態”の際には、職場のサーバーにVPN接続するため、Wi-FI自体は暗号化されていなくても構わないと言うだろう。
料亭のしゃぶしゃぶのサービスのように、何から何まで用意してくれて(つきっきりで、お皿にまで入れてくれる)、それはまさしく日本の「おもてなし」の代表例でもあったが(飲食店というよりむしろ看護婦さんレベルだ)、コンピューター技師にとっては「今からログインするんで部屋から出ててもらえますか」というシーンでもある。
また、お抱え運転手というタイプの人達ではないので、エコカーを自分で運転してきたのであれば、当然お酒は飲まないことになる。
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「食事中にパソコンを広げるなんて!」と言えば確かにそうだが、食事中ずっとスマートフォンをいじっているか、料理写真を撮り続けている(しかもフラッシュ焚いて)人の方が増えた昨今、果たして「食事中のマナー」というものが明確に存在するのかさえわからない。
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ネットワークエンジニアにとっては、アラートメール(管理する機器類に異常を検知した際、リアルタイムに電話などに通知されるメール)が鳴れば、すぐさまリモートログインできる環境こそこの上ない「ホスピタリティ」と感じるだろうし、できれば彼らが広げるパソコンの画面が覗き込める位置(画面に向かって180度圏内)には立たないことが要求される。
だとすれば、これからは「あの店の回線速いんだよね〜、いつも実測で600Mbps出てるし」「うちのオフィスより速いじゃんっ!」的な口コミも重要になってくるんじゃないかとさえ思う。
休みの時くらい仕事道具から離れたいと考える人が多い中、緊急時に「間に合わない」ことをストレスとする彼ら(だから旅行に行かない人も多い)にとっては、むしろ気兼ねなくノートパソコンを広げてかまわない環境の方が落ち着く(という人が多い)。
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これらの変化は、喫煙者が多かった時代からガラッと一転し、全面禁煙のお店の方が増えた様変わりのようだ。
その“変化”がある日突然やってくるのは、大手の方針に周りが追随するため。
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身近にそういう人がいない人には、テレビで一番わかりやすい“絵に描いたような”キャラクターとして、クリミナル・マインドのペネロープ・ガルシアをご参考に(笑)。
私も女性だったらあんな感じだっただろうなと思いながら観ている。
いわゆる“ガードマン”のような仕事で、問題や侵入者が現れないにこしたことはないけども、いざその時のために気を張ってスタンバイしておく必要があり、復旧までの時間がサービス約款に定められている場合(例えば15分以内に復旧などの約束事)は、オーバーすれば料金返金にもつながるため、待機中ノンビリ居眠りというわけにもいかない仕事だ。人員が少ない組織だと、夜中でも早朝でも出動しなくてはならないことも多々ある。
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みずほフィナンシャルグループ大規模システム障害(2002年04月01日)
私にとっては記憶に新しい。こんな時、担当エンジニアは一週間は寝られないのではいかと思う。
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言ってみれば、ウルトラマンみたい。
ウルトラマンの場合、戦う時間は3分間で他は待機だ。
必要とされた3分間で全力を出し切らなければならず(というより全部解決しなくちゃいけない)、待機中にお酒飲んで居眠りして、いざというときに間に合わなかったら大惨事だし、そんなことが起きようものなら、翌日街を歩けばちびっことPTAに取り囲まれ“ウルトラマンの称号”を剥奪されるだろう。
家に帰り着いたかと思ったら急に現地に向かわなければならないとか、ついに旅行に出たかと思えば急いでホテルに戻って作業しなきゃいけないとか、誕生日にお出かけする約束したら緊急招集がかかったとか、家族に対して肩身の狭い思いをしているネットワークエンジニアの皆さんは、お子さんや奥さんには、“ウルトラマンと同じ感じの仕事だ”と説明することで理解が得られやすくなる気がする(?)。
国家公務員の正義のハッカーが誕生したことだし、10年後のホスピタリティの在り方は、否応なしに変わっているんじゃなかろうか。
12年間、マンションのエントランスと廊下で流れ続けていたにもかかわらず曲名がわからないままだった。
いざ判明するとあまりにも有名な曲でお恥ずかしい限り。
パールマンのヴァイオリンとヨーヨー・マのチェロという豪華な組み合わせ。
チェコ出身のドヴォルザークのメロディは、ボヘミアン(すなわちスラヴ)の優美で繊細かつノスタルジックな魅力全開だ。
■本日のリンク
ユニクロ「日本式接客」は海外で定着するのか
http://toyokeizai.net/articles/-/68222
※日本式が必ずしも心地よいというわけではない事例ではなかろうか。
富山大にサイバー攻撃 サーバーのパスワード単純なまま
http://www.asahi.com/articles/ASH625DS6H62UUPI001.html
IP電話乗っ取り「国際」停止依頼後も料金請求
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150621-00050125-yom-soci
※「NTTの身勝手な請求」とあるが、NTTから見れば顧客回線の利用料金なので、今後はどこからが利用者の責任なのかという論争が増えるだろう。昔で言えば、空き巣に入られ国際電話をかけられた場合の料金は誰が払うのかという話しに似ている。
早稲田大にサイバー攻撃=感染半年気付かず、個人情報流出
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201506/2015062200722&g=soc
「未来のジョブズ」目指す、小学生の人気習い事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150629-00050079-yom-soci
Facebook元役員「プログラミングを学ぶのなら、生涯仕事に困らないことを私が保証しよう。」
http://lrandcom.com/facebook_former_executive_learning_programming_guarantee_life_time_work
前回予告した「誰にこの全責任を丸投げしようかという点について」は次回お届けする予定であります。
Photographer&Engineer: Charlie