「上位2%」は100人に2人や50人に1人とは限らない。パラドックス的な。

ルチアーノショー寄稿ブログ

※2017年07月25日『統計学的“知能指数”の眺め方。IQ 130以上は50人に1人いるのか。 』を追加した。

「人口の上位2%のIQの持ち主」というメンサのキャッチコピー。
それは人口の上位2%の人がIQ 130以上あるという意味であり、メンサの会員数ではない。

「100人に2人」「50人に1人」は確かだが、会社や学校、友達を50人集めてもIQ 130を超える人が1人もいない、または100人集めても1人しかいない、或いは全くいないということもある。そしてある所ではゴロゴロと転がっていることもある。確率でいう「偏り」だ。

進学校と普通校で比較するのが手っ取り早いだろうか。

サイコロを6回振っても1回も当たらないこともあれば、何度も当たることもある。
5回連続で外れると、6回目も外れるだろうと考えるのは精神論(宗教的な)であり、サイコロはあなたが5回連続で外した事を認識できない。
では、1/6の確率で当たるはずだから、6回目は絶対当たると考えるのは確率論の始まりだ。
しかし確率に反して当たらないこともあるのは、次の6回のうち2回当たるかもしれず(これをツキが回って来たと感じやすい)、サイコロにとってどこからどこまで1セットなのか認識できないので、メモリ機能でも無い限り、当たりにもハズレにも偏り続ける。

多くの電卓で1を3で割って3かけても1に戻れないソレに似ている。
電卓は「ついさっき」のことを覚えていない。

ギャンブラー達の確率収束論は、大凡分母の400倍も試せば、これらの偏りは均され、95%程の確率で(なおかつ10%前後の誤差で)結果は均等になると考えられている。
その理論からいけば、メンサ(IQ 130以上)の「人口上位2%」は、40,000人集まれば800人いるだろうということ。決して50人に1人いるわけではない。

実際にrand関数でプログラミングしても、分母の400倍でまぁまぁ均等に収束する。
これが40万回、400万回となればもちろん綺麗に均され、いつしか数字どおり2%に収まるようになっており、言うまでも無く確率論は決して間違っていない。

「直感と理論の乖離」を示した「モンティ・ホール問題」
にて、2億4千万回のサイコロシミュレーションの結果をご紹介している。

しかし、世の中自分を中心に考えてしまうと、「50人に1人いないなんておかしい!」(=メンサが嘘だとか、IQ分布が嘘だとか)ということになるが、98%は該当しないのだから、身の回りの人50人集めても1人もいないことの方が普通じゃなかろうか。

なっ、なんで?

東大生や、知的な業種の人達だけを50人集めたら、何人もいるかもしれない。
母集団というのは多くの場合偏っているので、いない時は全くいない、いる時はたくさんいることの方が多い。類は友を呼ぶとはこのこと。
どこかに沢山いれば、どこかにはいない。じゃないと数が合わなくなる。

「えー、だって平均したら50人に1人でしょ?」と言われても、数字上ではそうでも、現実は平均化されない。
若干パラドックスの要素がある。
それぞれの母集団が独立して存在しているので、「日本人全体」という具合に平均化される前に偏った集団をつまみ出してる感じ。
東大は東大で存在し、他の大学と成績や知能は平均化されないのと同じ感じ。

例えば下記の職業分布で言うと、IQ 130を超える人が存在する職種は4種しかない。
※私はいずれにも属していないので事例として取り上げる。

職業別のIQの分布はどうなっているのか
http://gigazine.net/news/20081126_iq_by_occupation/


Medical occs- MD or equiv.:医学博士または同程度の医療従事者
College professors:大学教授
Social scientist:社会科学者
Materials and design engineers:材料、設計技師

原盤PDFを見る限り標準偏差15。
http://www.ssc.wisc.edu/cde/cdewp/98-07.pdf

アメリカ・ウィスコンシン州の男性の統計だが、このデータだけで見れば4種の職種以外にIQ 130を超える人がいる可能性はなさそうで、4種以外の全ての業種を対象に統計を取ると、場合によっては男性労働者を何千人、何万人集めてもIQ 130以上の人はいないかもれない。
一方で上位4種の人達を対象にすると、5人に1人くらいはIQ 130を超えるかもしれない。
前者を見て「全然いないじゃないか」と思う人もいれば、後者を見て「何だいっぱいいるな」と感じるかは、自分が基準にしている母集団が全く異なることを示している。

確証バイアスに陥らないように、まず自分の座標(ポジション)を客観的に確認することから始まる。

/*
太平洋のど真ん中で目が覚めた時、日の出の方向が東、日の入りの方向が西、南中高度が南寄りなら北半球にいることがわかり、影がなければ赤道上かなとか、それほど熱くもなく寒くもなく影が北向きなら、夕日に向かって突き進めば日本に着くんじゃないか的な。まずは自己座標の確認が必要だ。
※日本は日出ずる国だが、太平洋から見ると日が沈む国だ。人間が決めた日付変更線をベースにしているだけで、球体の地球において太陽はどこから昇るわけでもなく、どこからでも昇る。
/


IQ 120 11人に1人
IQ 125 21人に1人
IQ 130 50人に1人
IQ 135 100人に1人
IQ 140 250人に1人 スティーブ・ジョブズと私(笑)。
IQ 145 750人に1人
IQ 150 2,500人に1人
IQ 160 31,000人に1人

という分布らしいので、

その1:自分のIQが確定している場合。「これが解けたらIQ 150」というものや、インターネット上のIQテストを受けて150とか160が出た場合に、「私はIQ 150だ」と思うよりは、(私の場合)この問題はIQ 140以下の問題だと考えた方がいい。ある日突然知能が上がるものではないから。

その2:自分のIQはわからないが、統計分布と該当者数/挑戦者数から割り出す方法。「2,500人に1人」しかいないIQ 150の問題を解けた人が100人いたら、最低でも25万人の人が挑戦していなければならないと考える。当てはまれば信憑性があり、当てはまらなければ、当てはまるように換算する。もし挑戦者が1,000人だったら100/1,000だからIQ 120以下の問題だと考える。

その3:身近なところを基準に計算する。(この際偏りは無視するとして)、もし身近な人10人で挑戦して1人でも解けたら10人に1人だから、それはIQ 120以下の問題だと考える。例えば東大生は、周囲の人達が極めて特殊な母集団だということを理解しているので、通常は問題は起きない。

という思考手順を踏む。大凡上から順番に正確だろう。

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(ずっと続いている)閉店セール!
特別なお客様にだけ!

とうたった方が客寄せになるように、オンラインIQテストは相当高く評価される。自分だけ特別みたいな。

250人に1人スティーブ・ジョブズはいないのは当たり前だし、同等の人物もいないので、IQ 140あっても成功するかどうかは人それぞれだ。
そこで、IQ 150は2,500人に1人だから、2,500人いればスティーブ・ジョブズ並みの人に会えるかというとそうではない。
じゃぁ、IQ 140以上あってもスティーブ・ジョブズを超えられない人がほとんどだから、IQって関係ないよねと考えるか、最低でもIQ 140ないとスティーブ・ジョブズにはなれないってことだねと考えるか、分岐するところ。

こうして、1つのデータから何かを読み取る(私は「データ・プロファイリング」と呼んでいる)にしても多くの分岐点がある。
この分岐の初期からズレはじめると、全体を把握できない上に、自己中心的な推論でまとめようとし、信憑性がないどころか周囲の総スカンを食うことになる(いわゆる偏った物の考え方)。

データから何かを読み解く際に重要なのは、感情を捨てること。私の見解ではこれが最重要事項。
そこに感情がある限り、勘違い、思い込み、偏見を生み、いつまでも何も見えてこない。
顔を近づけて「ガン見」しているうちに、周りの景色は変わり時代も変わっていたとなれば(花屋の花も変わりました的な)、そもそも所属する母集団も移り変わっている。浦島太郎だ。
株や為替のトレードも機械(システム)の方が着実に利益が上がるというのも、人は感情に左右されやすいことを示している。

/*
私は思い込み、勘違い、偏見の代表例としてよく「黒塗りのベンツ」論を取り上げるが、ここ最近の「山口組分裂」報道で、本部に出入りする組長・幹部の様子が映し出されるので、ここぞとばかりに観察したところ、ほとんどがトヨタの白いワゴンだった。複数の映像の中から一台だけシルバーのレクサス(4ドアセダン)を見つけたが、黒塗りもベンツもなければ、一台を除くとセダンでさえなかった(私が見た映像では)。都内において、黒いセダンよりもワゴン車の方が職務質問を受けやすいという事実からも本来は容易に推測できる。
ちなみに、ロシアンマフィアとアメリカのマフィアがレクサスを好むことは知られている。
*/

「上位2%」は100人に2人や50人に1人とは限らない。パラドックス的な。_f0337316_11071547.jpg

似たような観点から下記の記事をおすすめしたい。
※ルチアーノショーでは2013年8月3日に配信された記事だ。

データジャーナリズム――世界に広がる「データからニュースを発見する」挑戦
http://thepage.jp/detail/20130623-00010000-wordleaf


残念ながら、日本人はまだまだ苦手な分野とある。

近年流行っている思考方法として、FBIの採用試験にも使われているフェルミ推定というものがある。
例えばニューヨークの便器の数はいくつ?とか。
「そんなのわかるわけないだろ!」という答えが普通なので、解けなくても何ら問題ない。
ただFBIは多くの人種、宗教、言語が混在する合衆国で、大富豪から貧困層、知的障害者からIQ 160を超える大天才、天才ハッカーもテロリストも取り締まらなくてはならないので、「普通」の思考回路では事件が解決できない。世間では「どうでもいい」と言われるような、現場に残された数少ない証拠から辿っていく必要がある。

//「ロジカル・シンキング」系の書物に詳しい。

フェルミ推定的に言うと、日本にIQ 130以上の人は何人いますか?
私は単純に2%ではない気がしている。

上位2%は、モンティ・ホールの問題に似ている。
IQ 130以上“「100人に2人」ということは「50人に1人」だね”という存在を、クジに例えて考えてみた。
100枚のカードの中に赤丸が2枚、青丸が98枚ある。
100枚のうち50枚を選んで、その中に赤丸が1枚入っているだろうか。
確率で言うと「入っている」ことになるが、何度50枚を選んでも、1枚も赤丸が入っていない場合もある。
でも100枚の中に2枚の赤丸カードがあることは事実だし何も変わらないから、これが2%という確率が示すところの真実だ。

カバーページでご紹介した、世界でアジアが最もIQが高いというデータから見ると、人類(全人口)の2%をつまめば、当然アジアに多いだろうと考えてみたくなる。
ただし日本は平均IQが5ポイント高いというデータだけで、IQ 130以上の人も同じ比率でいるかというと、それは断定できない。
日本のサービスのように、底が高く、天井が低いようなケースも考えられる。
安いお店に入っても平均的にいいサービスが受けられるが(底が高い)、高級ホテルにいってもさほど変わらない(天井が低い)という特徴がある。いわゆるお金を持っても楽しめない国だ。突出した天才を育てようという教育方針でない国に多い均等主義と言える。
そうすると平均点は高くなるが、130点、140点、150点は少ない可能性がある。

一方で国別IQランキングに入っていない国でも、例えばIQの差が激しい国もあるかもしれない。
低い人はとことん低く、高い人はとことん高い国。
そうすると、平均すれば100を下回るかもしれないが、IQ 130以上の人が集中している可能性もある。
欧米のサービスがそんな感じ。安いお店では値段相当(日本人から見れば信じられないレベル)だが、高級なところにいけば青天井。お金を持てば持つほど楽しみが増える国。教育も中途半端な英才教育ではなく「ギフテッド」(神様の贈り物)として存分に伸ばそうとする。

例えば人口の多い中国、インド。優秀な人はとことん優秀だ。
インドのIQ上位25%は、アメリカの全人口より多いと言われている。言い回しが凝っているだけで、単純にインドの人口の25%がちょうどアメリカの人口(3.189億人)に相当するので、上位だけで選りすぐってもアメリカの人口ほどいますよという意味だ。
中国13.57億人、インド12.52億人。合計26.09億人のうち、(偏りの例として)IQ 130以上の人が+1%=3%いるとすれば7,827万人になる。
※まだ字が読めない人もいるという国だから、平均よりIQが低い人も多い可能性がある分、IQランキングに入らないだけかもしれない。断定できる要素がない。
世界人口70億人の2%=1.4億人の内、残り6,173万人を、中国・インドを除いた43.91億人の人口で割ると1.4%しかいないことになる。
そこで冒頭の、スウェーデン・メンサの会員数と人口比を見比べると、必ずしも「日本人の2%」がIQ 130を超えるとは言えない可能性がある。→別冊:国別のノーベル賞受賞者数とメンサ会員数。

下記はいずれも平均100だが、下に行くほど差は開く一方で110以上の人が出現する(ただのサンプル)。
「上位2%」は100人に2人や50人に1人とは限らない。パラドックス的な。_f0337316_11361685.png
とりあえず均等かつ大げさに区分した。

A,B,C,Dの国で上位2%をつまむと、D国が最も高いことになる。

上記の表のフォーマットで、平均IQを105にしようとした場合、こんな分布もあり得る。底が高く、天井が低い日本っぽい気がする。
95 100 105 110 115 105(平均)

※日本人の平均IQが105と出ている以上、平均が100でなければおかしいという前提の話ではない。恐らくは世界標準IQテスト(ウェクスラーのような)の結果を「世界」という母集団で見た数値だろう。

それじゃ、「日本にはIQ 120以上の人はいないのか?」となるが、いることは確かだ。
ちょっと大げさに表現しているだけで、この考えに至ったのは、東大生の平均IQが120であるという点から。
平均を120にしようとした場合、単純に計算すると全員120か、130の人がいれば110の人が必要になる。同じように140の人がいれば100の人、150の人がいれば90の人、160の人がいれば80の人が必要だ。
平均を下回るIQで東大に合格するのかどうか私にはわからないが、上記のように考えると、あまり開きのない平均IQ 120なのではないかと推測するところから、もしかして日本の平均IQ 105というのも、同じような構成なんじゃないかという考えに至った。

※私は東大出身じゃないし、東大を目指したことも可能性を感じたこともないので、部外者として東大をサンプルとしている。自分が所属する母集団を高く見せようという感情が入らないようにしている。

毎年3,000人を超える合格者のいる東大、学生数を単純に4倍して12,000人と仮定しよう。
2%ということは240人だ。
240人のIQ 150(130じゃなくて)と、11,760人のIQ 119の組み合わせでも平均119.62(≈120)になる。

よって平均値だけでは、一部の人が押し上げ(押し下げ)ているのか、均等で差がない粒ぞろいの集団なのかはわからない。
だから「上位2%」と言っても、そもそも日本にいるかどうかもわからないので「50人に1人いる」とは言えない。

メンサのホームページでは全人口の内上位2%のIQ(知能指数)の持ち主であれば」とある。


IQではなく所得に置き換えて考えてみた。
所得分布を見ると、上位2%は1,700万円以上。これは人口ではなく世帯。

所得の分布状況(厚生労働省 平成21年調査)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa09/2-2.html


Facebookの日本人ユーザーの平均友達人数は108人とされているので、では全てのFacebookユーザーの友達リストの中に、世帯年収1,700万円以上の人がいるかというと、いない人はいないし、いる人は何人もいるという結果になる。
例えば儲かっている会社の社長の友達リストの中には、その儲かっている会社の取引先社長も含まれているだろうことを考えたら当然の結果だ。

これらのことから「2%」は100人に2人でもなければ50人に1人というわけでもない。

■現在 5/10 ページ。
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■目次
 1ページ:噂のメンサは本当に高知能なのか。実験台になってみた。
 2ページ:WAIS-III ウェクスラー成人知能検査を受けてみた。全額負担で。
 3ページ:オンラインIQテストの信憑性をメンサ&WAIS-IIIと比較。
 4ページ:Cambridge Brain Sciencesをやってみた。
 5ページ:「上位2%」は100人に2人や50人に1人とは限らない。パラドックス的な。 現在ページ。
 6ページ:知能レベルが高い人ほど人を信じやすく、低い人はあまり人を信じない?
 7ページ:言語性知能。片言の外国人との会話から考察。
 8ページ:知能、お金、容姿。○○だからいいってもんじゃないという不思議な理屈。
 9ページ:東大首席の山口真由女史の言う「俯瞰力」とは。
 10ページ:頭と心、理論(Logic)と感情(Emotion)。
 あとがき:知能指数とは。良き理解者へ。あとがき。
 別冊:色盲とIQ。色が絡むとIQ(判断力?)が著しく下がる。
 別冊:知能指数(標準偏差15,16,24換算表)と出現率をエクセルでまとめてみた。
 別冊:国別のノーベル賞受賞者数とメンサ会員数。
 追加少年からのお便り。
 追加知能検査で天才を探す欧米と、診断目的でしか使用されない日本。
 追加学力偏差値でいうところの上位2%とは。
 追加IQ 162以上を正確に測定できるのか。唯一の解答者は「運命の人」なのか。
 追加賢い人、賢くない人の特徴。IQ、学力、知識を束ねるのは性格(感情)。
 追加天才とEQ。スティーブ・ジョブズのEQは高いのか。

Photographer&Engineer: Charlie
JAPAN MENSA会員
AEAJアロマ検定1級(笑)

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by charlie-ls | 2015-09-05 11:05 | 【赤坂】ルチアーノショー寄稿ブログ

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