天才とEQ。スティーブ・ジョブズのEQは高いのか。

ティーブ・ジョブズは、自ら創業したアップル社から追い出され(“アップル社の将来のためにならない”という理由で)、ネクスト(MacOS Xの基礎となっている)、ピクサー(ディズニー映画のCGを担当している)を創業し、そして出戻り、キャンディーカラーのスケルトンボディで大ヒットした、初代iMacを発売した頃、インタビューでこう発言した。

しまった、失敗したと思った


マック(当時は“Macintosh”)に、CD-RW、CD-R(すなわち書き込み可能なCD)ドライブを搭載しなかったことについてだ。インタビューアーの質問自体、スティーブに「後悔」を促すかのように飛び出した。

2000年初頭、好きな曲を集め、今で言う「プレイリスト」を作り、オリジナルの音楽CDを「焼く」という行為こそが、「意識高い系」のファッショントレンドであり、新たな時代の幕開けを示す象徴のようなものだった。
MDを編集するのではなくCDを焼く。
あたかも、「パソコンはオタクのためのものではない」というメッセージかのように。

同時に、日本人の私にとっては、プレイステーションのマーケティングに明け暮れる、“ソニーの時代”が終わろうとしているかのようにも見えた。

スティーブの憧れたソニー。

/*
1991年、アップル社製ノートパソコン「PowerBook 100」は、ソニーに製造を依頼している。
*/


私も1994年に初めてパソコンを持った時からマックユーザーだが、確かにアップルはCD-ROM(読み込み専用)ドライブは早くから搭載していたのに、書き込み可能ドライブは頑なに搭載しなかった。
一説によると、スティーブの拘りで、トレイ式ドライブではなく、“美しい”<吸い込まれるような>スロット(ローディング)式ドライブじゃなきゃヤダと言い張ったことが原因らしい。
※実際にPowerMacのようなハイエンドマシン及び初代のホタテ型iBookなどを除くと、マックのほとんどがスロット式ドライブを搭載している。トレイが出てくる時のあの音(ギアの回転音)も含めた安っぽさ。言うまでもなくスティーブはスロット派だろう。

結果的に、みるみるうちにWindowsユーザー達が時代をリードし、マックは値段が高いだけの「信者のための」オモチャのようにさえ言われた。
音楽通であるスティーブにとって、「ファッショナブル」をうたったマックにとって、音楽ファンから「選ばれない」なんて、これほど屈辱的な評価はなかったに違いない。
※厳密にはDTMなど制作側には一定の支持を得られていたが。

今ではどうだろう。
あの「iPod」を生みだし、iTunesストアは音楽業界そのものを変えた。

しかしスティーブ・ジョブズはBlu-Rayドライブを決してマックに搭載しなかった。
最近のマックはDVDドライブですら搭載していない。
※理由は知らないが“好きじゃない”らしい(笑)。フロッピーディスクドライブを外したのも早かったので、恐らくは回転式ドライブが“フォーマルじゃない”という感覚的なものじゃないだろうか。


のビジョンは、とうの昔に決まっていたに違いない。
ビジョンという名の妄想ではなく、現在のアップル社が示している現代の結論だ。

その「結論」を行動に移すのが早すぎると、社会、世の中、一般に受け入れられず、普及しない。
いずれ「受け入れるしかない程のものであっても、「今は受け入れない」という事象が発生する。
人々は、黙って天才の言うことを聞くほど素直ではないし、その人が天才であることを見極める力、天才が言っていることが正しいと評価できる能力があれば、あと10年早くiPhoneやiPadが発売されていたはずだ。

IQの差が20開くと、会話が成り立たないという説に対し、私は感情論という面でならと分析・解説してみたものの、スティーブ目線で言えば、世間は「私が言っていることが、10年かからないと脳まで届かない奴ら」だったんじゃなかろうか。

天才スティーブから見ればお金をドブに捨てるような機器に大金をつぎこんでいたとしても、クリスマスプレゼントに買ってあげたパソコンが、開梱したクリスマス当日にちゃんと動かなかったとしても、それでも「今」が楽しければそれでいい人が多い。いつか来るかもしれない未来の話に耳を傾けたりはしない。

アップル最初のPDA「ニュートン」は、1993年発売だ。その後PalmなどPDA端末が出てきては消え、再びブラックベリーやシンビアンなどがPDA市場を賑わせる中、約10年かけて、電話機とPDA、デジタルカメラ、音楽プレーヤーをiPhoneが「統合」した。ニュートン発売から15年後だ。

90年代後半、倒産の危機にあったアップル社は、2011年08月、時価総額でエクソンモービル社を追い越し、事実上の「世界最大の会社」(業種を問わず。そしてロシアの上場企業全てをも上回る)となった。スティーブ・ジョブズがCEOを退任した月だ。その1ヶ月半後、彼はこの世を去った。
彼にとっては「当たり前」のその日が来たに過ぎないだろう。むしろ何でこんなに時間がかかったのか、腹立たしささえあったんじゃなかろうか。

スティーブ・ジョブズがまれに見る天才であることは揺るぎない。
が、そんな彼の中の「失敗」は、結論を急ぎすぎる(凡人目線に過ぎないのだが)とか、性格的なものに起因している。

かといって、決してそれは「異常」でも何でもなく、答えがわかるんだからすぐに答えて当たり前。
凡人から見て「急ぎすぎる」ように感じても、天才は天才の標準的なペースで喋っているに過ぎず、彼に「ちょっと待って」と制限をかけることに何の躊躇いもないのだとすれば、凡人中心に世界が回っていることを指し示している。

まさに「会話が成り立たない」瞬間を垣間見る。


才や秀才達の「理論」は、凡人の「屁理屈」と違って、ほとんどの場合間違っていない。少なくとも他の人達よりも正しい可能性が高く、問題が生じるとすれば、この性格的なところ。
そこを指して(刺して?)、「天才はEQが低い」という話が盛り上がる。
しかし、その表現は少し間違っている
「天才は、IQ程EQが高くないことが多い」という“可能性”があるが、「IQもEQも“並”か低い人が大半を占めている」ということは確定している事実だ。

IQが高ければいいってもんじゃない」と言う人は「EQの方が大切だ」と言うことが多い。
//googleで「IQ EQ」と検索すると、タイトルだけでも見てとれる。
私の予想では、その人のEQは高くない
世の中の「EQ」テストの内容は、大凡他人から好かれる要素、「輪を乱さない」とか「自己中心的でない」とか、いわゆる協調性を測っている。
ならば、「私はEQが高い」と言うことは「他人は私のことが好きだ。多くの場合」という意味であり、その時点で他人から好まれない要件を1つ満たすことになる(笑)。「別に039.gifと言われそうな空気感。

だから「私はIQが高い」は成り立っても、「私はEQが高い」は発言自体が減点対象であるということだ。
IQが高い分には、人から嫌われようと関係なく、ただ単に出た結果の値を伝えているに過ぎない。一方で「EQが高い」ことを名乗るのは、1つ間違えると「君も俺のこと、きっと好きに違いないよ(EQの差が開きすぎて、今はわからないだろうけど)“教えてあげる”ようなものだ(笑)。“お前はもう死んでいる”くらい余計なお世話だ。

本来のEQ(=心の知能指数)テストは実に簡単。
Facebookの友達リストは平均100人ちょっとらしいから、友達リストにいる100人に、「自分自身の友達リストから、大好きな人を2人だけ選んでください」(200人いる人は4人選ぶでもいい)と頼む。
果たして、自分は選ばれるだろうか。

「IQ上位2%」よりも難関じゃなかろうか。
いや上位2%は上位2%なんだからどっちも同じなんだが、100人中「大好きな人ランキング」で1位2位になるのは結構難しいと思う。
それこそ「好み」は多岐にわたり、地球上全員に聞いて回れば綺麗に1対1の「対」(よって全員一位でありタイ)となり、神の存在を信じずにはいられなくなるかもしれない。

私は選ばれる自信は全くナイ。

選ばれなければ「並」(平均)か、どちらかと言えば嫌われているということだ(笑)。
ってことは、友達リストから消えてなくなっても気付いてももらえないし、Facebookアカウントごと削除したとしても、自分から「俺(私)がいなくなったことに気付きましたか?」と問いかけるまで気付かれないだろう。ということだ。

所詮そんな存在かもしれない自分が「EQが高い」と思うのは思い上がりの他ならないし、究極のナルシズムだ。思考としてはストーカー的だ。「私がこんなに好きなんだから、相手も私のことが好きに違いない。そうじゃないとおかしい」的な。

それでも「IQよりEQが重要だ」と言ってみるのはいいが、IQが遺伝上の知的能力なら、EQはスター性だ。

IQの話題から切り替えて、「スター性」勝負を挑もうかという人が、本当にEQが高いとは思わない(笑)。

鏡を見たらわかるじゃないか。と思う。
顔とかスタイルの話じゃなくて。
「ニコッ」と微笑むだけで、人を安心させ、明るい気持ちにさせ、「あなたが大好き」と言わせる力があるか。
「IQよりEQの方が大切だ」と言っている瞬間の自分の顔をビデオに撮って、5回見て、自分に惚れ惚れしますか的な。

ではどうだろう、天才スティーブ・ジョブズは。
彼からどれだけ罵られようと、エレベーターで乗り合わせただけで「クビ」になる可能性に冷や冷やした従業員だろうと、迷いも無く100人の友達リストの中からスティーブを選ぶ人は多いんじゃなかろうか。簡単に「EQ上位2%」をクリアしている。

彼は「変人」として有名だし、ソニー前会長ですら、インタビューで「彼と仕事は無理」と思ったことを明かしている。
でも接した人達に愛されているのなら、それは結果として「EQが高い」と言っていい。人が好み、望むのだから、わざわざどこかの学者が定めた質問フォーマットに合わせる必要はない。

天才でありEQも高い、スティーブ・ジョブズ。
大富豪でありダサい
、ビル・ゲイツ(関係ないか)
何と言われようと、彼らはルールを変える力さえ持っている。


の多くは、好き嫌い(感情)が大部分を占めている。
「アンタには言われたくないけど、スティーブが言うなら仕方ないわ」という人は山ほどいるだろうし。
※私が『少年からのお便り。』の最後に伝えたかったのは、この部分だ。

同じ事を言っていても評価が異なる。

このスティーブのEQの例はまさしくソレじゃないだろうか。
罵られても「スティーブは僕に期待してくれているからこそ、あんなに厳しいことを言うんだ」と受け止める人さえいるに違いない。
世の中が「これだから015.gifと言っている“ゆとり世代”の若者も、スティーブに殴られそうになったら「ちょっと待っててください」と言って、記念写真撮ってSNSにアップして自慢するかもしれない(笑)。場合によっては、「あのスティーブが、唯一手をあげた相手」(→愛されてたのね〜)として、故郷に錦を飾るかもしれない(笑)。

マゾヒズムなニオイさえ感じるが、人を好きになるということはそういうことだ。

だから、IQは一定の基準で、社会的に、世の中的に、一般的に「重要」だと考えられるテスト(5教科のようなもの)で測定することができても、EQは「憧れ」「ファン」といった特別な感情が絡むことで、相手の受け止めた方が180度異なることもあり、測定は不可能だろうと私は思う。

場合によっては、「余所よりも高い給料を払ってくれる社長だから好き」ということもあるかもしれない。
そうなると社会的地位やお金にさえ影響を受ける可能性がある。

それでもEQの方がと言うならば、EQテストの発案者はノーベル賞に値するだろう。人間力が数値化できるのだから。企業、医師、公務員試験は、今すぐにでもEQテストに切り替えるべきだ。

というわけで私は「EQ」の測定結果には懐疑的であり(レコグナイザー式は一部の能力が測定できると思う)、「人間力」的なスコアは、結局は需要と供給のバランスで、相場のように変動しつつ、その時その場の個々の状況・事情に応じて「値付け」されるものなんじゃなかろうか。と思う。


メリカのドラマ“スコーピオン”は、「トータルIQ 700の天才集団(4人組)」というチームが、国家の安全に一役を担うというストーリー。劇中「天才はEQが低い」というセリフが何度も出てくる。恐らく世間の発言の出所はココだ。

が、しかし!
みんないい人達だ(笑)。

多分ドラマの作者も、途中から気が変わったんじゃなかろうか(笑)。
妙に人間くさくて、真っ直ぐで正直で、正義感に燃えていて、普通の人よりも「熱血」に見える。

彼ら(スコーピオン)を指して警部が「なぁ、メンサ」と呼ぶシーンがあった。それに対し「メンサって、ただのインテリ集団じゃないか」一緒にしないでくれ的な表情で言う一幕が印象的だった。
メンサの会員には視聴をオススメしたい(笑)。

「トータルIQ 2000の偶発的集団(24人組)」
だったら見なかったが。

というわけで、次回のネタはまだ決まっていないので、引き続きウォッチングを続けるチャーリーであります。
みなさん、素敵なクリスマスを069.gif


お知らせ:気になる記事にコメントを添えてご紹介するチャーリーのタンブラー(毎日更新)を始めました。

■目次
 1ページ:噂のメンサは本当に高知能なのか。実験台になってみた。
 2ページ:WAIS-III ウェクスラー成人知能検査を受けてみた。全額負担で。
 3ページ:オンラインIQテストの信憑性をメンサ&WAIS-IIIと比較。
 4ページ:Cambridge Brain Sciencesをやってみた。
 5ページ:「上位2%」は100人に2人や50人に1人とは限らない。パラドックス的な。
 6ページ:知能レベルが高い人ほど人を信じやすく、低い人はあまり人を信じない?
 7ページ:言語性知能。片言の外国人との会話から考察。
 8ページ:知能、お金、容姿。○○だからいいってもんじゃないという不思議な理屈。
 9ページ:東大首席の山口真由女史の言う「俯瞰力」とは。
 10ページ:頭と心、理論(Logic)と感情(Emotion)。
 あとがき:知能指数とは。良き理解者へ。あとがき。
 別冊:色盲とIQ。色が絡むとIQ(判断力?)が著しく下がる。
 別冊:知能指数(標準偏差15,16,24換算表)と出現率をエクセルでまとめてみた。
 別冊:国別のノーベル賞受賞者数とメンサ会員数。
 追加少年からのお便り。
 追加知能検査で天才を探す欧米と、診断目的でしか使用されない日本。
 追加学力偏差値でいうところの上位2%とは。
 追加IQ 162以上を正確に測定できるのか。唯一の解答者は「運命の人」なのか。
 追加賢い人、賢くない人の特徴。IQ、学力、知識を束ねるのは性格(感情)。
 追加天才とEQ。スティーブ・ジョブズのEQは高いのか。 現在ページ。

Photographer&Engineer: Charlie
JAPAN MENSA会員
AEAJアロマ検定1級(笑)

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by charlie-ls | 2015-12-19 11:10 | 寄稿ブログ

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