統計学的“知能指数”の眺め方。IQ 130以上は50人に1人いるのか。

能指数は意外にも心理学分野だが、文系的な捉え方では細部が漠然としてしまう。ココは1つ統計学的に眺めてみたい。

最近アップした知能指数表201707版には、従来の出現率に加え、各IQ値に対し「1万人中何人いるか」の値を追加した。
※「出現率」で言う「2%」はその上位(マイナスσの場合は下位)1%も内包するため、「以上・以下」という意味で捉える必要がある。偏差値ベースの「パーセンタイル」を中央値で分割し昇順・降順逆さまにしたものに近い。

IQ 130以上は2.28%(厳密には2.275%)いるが、IQ 130ジャストは1万人中36人しかいない。

具体例では、この表のIQ 148〜152を見ると、いずれも1万人中に1人しか存在しない。よって初めて知能検査を標準化する際に、例え1万人集めて検査を行っても、その被験者を「IQ 148以上」としか表現できず、厳密にIQ 148なのかはたまたIQ 152なのかを特定できない。
※表はエクセルによって丸められているので、小数点レベルの誤差がある。

出現率で見ればIQ 148以上は0.07%(0.0687138%)だから、1万人集めたら6人はいるんだが、「ジャストIQ nnn」と断定する根拠に乏しい。

ウェクスラーの上限値は「161以上」なので、160までは断定してみせようかという心意気なのだから、最低でも3万人と言いたいが、それでもジャスト160は1人のみなので、「該当事例を10名は挙げられますよ」と言うなら30万人の検査実績を持っている(いなければならない)ということになる。

人は何人くらいの該当者がいれば納得するか(合理的に「偶然」を排除できるか)と考えると、どんなに少なくとも(雑だが)10人以上は必要だろうと考えられる。であれば、148〜152付近のIQ値を確定するためには10万人の被験者が必要となる。
※被験者10万人の場合、IQ 152ジャストが5人、148ジャストが14人現れる。前後の151(7人)と153(4人)との明確な有意差がほしければ更に3倍以上の被験者を必要とする。

同じように、被験者が1,000人だとIQ 134〜137ジャストが各1人しか現れない。よって「IQ 134以上」とは言えても、134を超える部分のIQ値を特定するには説得力に欠ける。

同様に被験者が100人の場合は、IQ 111〜120ジャストが各1人しか現れないため、上限値「IQ 111以上」としか言えない。

統計学的“知能指数”の眺め方。IQ 130以上は50人に1人いるのか。_f0337316_02143512.jpg

知能のブログの1ページ、『「上位2%」は100人に2人や50人に1人とは限らない。パラドックス的な。』を補足すると、IQ 130以上は実際に50人集めても居ない可能性が高い。

「IQ 130以上は2%いるはずなのになぜだ」(=厳密には2.275%)ということになるが、100人の母集団で知能検査を行い標準化しようとすると、IQ 121あたりから「0.998人」「0.907人」「0.821人」のような値が続き、人の最小単位である「1人」を切っている。130以上も「0.36人」以下が続き、足し合わせたら出現率通り上位2%(2.275%)になるが、「0.821人」や「0.36人」は机上の数値であり、実際には100人中明確にこの人だという存在が確認できず、かといって可能性がゼロではないため「存在しない」とも言えない。

四捨五入する人なら「居ない」と断言するだろう。

単純計算でも明快だ。上位50%がIQ 100以上。その50人をIQ 100から130までの30目盛りに割り振っていくと、各2名以下になることがわかる。正規分布のベルカーブの頂上ほど多く、裾野は少ないから大凡の「割り当て」が表を見なくともわかるだろう。

そういった角度から、私はメンサが掲げる「上位2%」(IQ 130以上)は堅実だと思っている。「50人に1人って結構いるし(大したことない)」論はお馴染みだが、ココまでの統計基礎を理解すれば、IQ 130以上の値を正確に測定するには大がかりな検査が必要なことがわかるし、イギリスはオックスフォードの創設者が「娘(妹?)の結婚相手を探すために設立した」という動機から見ても、被験者はせいぜい弁護士仲間から派生する母集団(パーティー参加者?)数百名想定だったと推定できる。フェルミ推定的に。

言うならば「IQ 130以上は50人に1人だ」は教科書通り“約分”した結果であって、中学生までの解だ。

メンサの入会基準である「上位2%」は実質的にIQ 130以上(厳密には130と131の間以上)を指していて、「上位2%」だけを見るなら100人中2人いる。一位と二位だ。しかし上位2%を「IQ 130以上」として受け止めるならば100人中2人居ない可能性の方が高い。

100人で知能検査し、無理矢理正規分布に沿わせた場合どうなるのかの表を添付する。

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この表はIQ 100以上なので全部足すと50人になる。
※2018年01月09日:IQ 100ジャストの確率を訂正しました。それに伴い少しづつズレます。

※「100」をベルカーブの頂上とするため、100から上、100から下と分ける場合は、各1.33%づつにしなければ数が合わなくなるので注意が必要。上図も同様。一目で確立が解る用便宜上2.66%で表記している。

小数点の「しわ寄せ」的に、50名の中にIQ 145が出現する可能性はある。がこれは突発的というか偶発的というか、ごく一般的な少ない母集団においては通常平均付近にしわ寄せ分も密集すると考える方が妥当だ。

学校で言えば「IQ 130以上は学年に数人居るか」(200人の学年なら4人)と問うならば、普通校には居ない可能性もある。進学校から何から1万人くらい集めたら出現率通り200人いるだろう。大学なら東大・京大などには沢山いるだろうし、会社ならアップルやグーグル、IBMなどハイテク企業に高知能が集まっているだろうことを考えると、一部の地域(主に東京)かつ限られた場所に集まっている=平均的な集団には少ない(または居ない)ということが言える。

その点「偏差値」なら同じ上位2%である偏差値70以上は確実にいる。なぜなら「今回テストを受けた人達」を母集団とする値だから、先に絶対居ることが確定しているから。

ややこしいが、この「統計」の領域が心理学業界でも難題扱いされているようで、沢山の「文系のための統計学」的な書物が出版されている。知能指数の理解が進まない1つの要因でもあるだろう。臨床心理士を志すも統計で挫折する人もいるらしく、心理学とは統計学だと言われる由縁でもある。

データサイエンティストにとっては興味深い分野だ。引き続き研究対象としたい。

※本文中の知能指数は断りがない限り標準偏差15の値を、偏差値は標準偏差10の値を用いた。

追記:表中の「ココを全部足せば2人」のところに2,000人に1人しかいないIQ 149を含める必要がある時点で、50人に1人はいない(可能性が高い)ことが解る。小数点人数とはそういうことだ。

統計学的“知能指数”の眺め方。IQ 130以上は50人に1人いるのか。_f0337316_12263389.png
2018年01月07日:この図を追加した。通常は2.28%が用いられるが厳密には2.275%。

【ゲスト投稿】上位2%についてどうしてもわかりません。

あとがき。

参考リンク:IQ「人並み以上」とは。

チャーリー(
JAPAN MENSA会員

AEAJアロマテラピー検定1級
AEAJ認定アロマテラピーアドバイザー
AEAJ認定環境カオリスタ
AEAJ認定アロマテラピーインストラクター
AEAJ認定アロマブレンドデザイナー
AEAJ個人正会員
JAMHAメディカルハーブ検定1級
JAMHA認定メディカルハーブコーディネーター
JAMHA認定ハーバルセラピスト
【国】ITパスポート試験合格(笑)。
【国】情報セキュリティマネジメント試験合格
【国】臭気判定士
薬学検定1級試験合格
HTML5プロフェッショナル認定資格 レベル1試験に合格。
個人情報保護士認定試験に合格。
情報セキュリティ管理士認定試験に合格。
【公】メンタルヘルス・マネジメント検定II種(ラインケアコース)試験に合格。
Comptia Security+試験合格。
SEA/J情報セキュリティ技術認定CSPM of Technical試験合格。
【国】危険物取扱者 乙種 第4類試験合格。
【国】情報処理安全確保支援士(旧情報セキュリティスペシャリスト)試験合格。
【国】ファイナンシャル・プランニング技能検定2級試験に合格。

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by charlie-ls | 2017-07-25 10:40 | 個人ブログ

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